●武道と6● 真の武道の回復 |
■術と道-5 真の武道の回復 稲葉稔(弓道の先生) 現在の学校教育では、柔道、剣道、弓道等という体育武道の科目はあるが、日本精神修養を中核とした真の武道を教えるものにはなっていない。 一般社会で云々される武道についても術の語と同義に解されて、精神性が欠如しているスポーツ化された競技武術に偏している。 しかも社会文化面で海外へ普及して武道人口が増えているにせよ、武道がマーシャルアーツ(格闘技)と翻訳されているように、本来の武道からは遠ざかっていく方向に進んでいる。 それらは文化伝統の面からいえば神棚のない(つまり精神性の探求のない)体育館道場に端的にあらわれている。 ここにおいて本来あるべき武道の姿を取り戻し、道と術の別と関連性を明らかにしつつ、両者の修養修練を積み重ねて、伝統文化としての武道を現代に回復していくべきであろう。そうしなければ、日本の文化伝統としての武道は死語になる。 では、真の武道の姿を取り戻すにはどうするか ―― 。 伝統文化の形をまず堅持し、日本の心を学び自らの心を覚醒して民族の魂を練る本来の武道にしていくことであろう。錬成は、民族の神々、武神への祈りに始まり、師弟、門人間に礼儀と信義があり、自らの道の探求があり、武術の鍛錬がある。 そして鍛錬の場である神々を祀る武道場は、清浄、静謐なる環境を保つというのが、最低限必要な条件であろう。 心を失い、さらに形まで失われれば、伝統の復活はいよいよ困難になる。 真の武道の姿を取り戻すには、いま残る武道の修行の形をまず堅持して、これ以上の衰退を止めること。あわせて現代に生きる武道を実践している指導者を探し求め、学ぶことであろう。 武が否定され、見失われ、しかも必要ないと一般に教育された時代状況の中での鍛錬の継続は、隆盛の中での探求とは異なった苦労や困難が伴う。敗戦、占領下において伝統的武道が否定される中でそうした苦難を経てきた指導者のもとで心身が鍛錬され、精神気概が養われ、術技が磨かれていけば、やがて現今の低迷を打破し、次なる文化を積極的に創造する民族の力が蓄えられていくことだろう。 明治神宮ホームページより (明治神宮志誠館館長:稲葉稔) ・・・・・・・・・・ いなば・みのる =昭和19年東京生まれ。明治大学卒。高校卒業時に合気会系本部道場に入門、植芝盛平氏に親近した島田和繁氏と出会う。その縁で山口清吾氏に入門。 昭和40年春、鹿島神流国井道之氏に入門、最晩年の教えを受け、 歿後独自の武道探求をすすめる。神道思想家・葦津珍彦氏に師事し、日本思想、武士道を学ぶため神社新報記者となり、民族精神回復運動に関わる。48年10月至誠館の武道研修科師範となる。平成5年より館長。 |
by kancho39
| 2006-05-21 16:49
| ◆武道と空手
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